郵便局のおじさんは9時40分ごろやってくる

日常を怯えて過ごす人間の雑記

女王蜂/SALVAGE

10代の終わり。

ショッピングモール内のカフェ。

そこで僕は友人を待っていた。

当時そのモール内にあったアパレル店員だ。

 

そんな折、カフェのバイトの女性と仲良くなり、

今思えば異様だが、

数日で、部屋の鍵を渡された。

 

その女性、仮にMとしよう。

Mは、そのカフェの看板娘らしく、

ストーカー被害に遭いかけたエピソードを僕に教えてくれた。

 

その当時、

僕らは、哲学やら文学の話題に夢中で、

文通なんて事もした。

まあ、手渡しだが。

 

Mとの日々は、短くもなかなか愉しく、

映画を観たり、

信仰という概念について語り合ったり、

雑多なこと、

繊細な話題、

様々であった。

 

ただ、この間、

一度だけMの人気から来る脅威を目にした。

 

事の発端は、ショッピングモールの駐車場にあるMの車まで、ファンが覗きに来ているという話。

 

僕は歯牙にもかけず、

まさかと笑った。

しかし、

その話は現実だと思う光景。

 

それは、

Mがシフトに入った日のカフェの席。

男性客が座る沢山の席のテーブルに、

これみよがしに置いてある本。

全て同じ書籍だった。

奥田英朗の『イン・ザ・プール

 

それこそ、

Mが読んでいる最中の一冊であり、

車内に置いていることもあったもの。

 

Mは、あの店のマドンナ。

英語圏でいう、

Queen Bee

 

結果的に、無事に済んだ事が幸いだ。

 

では、また。