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日常を怯えて過ごす人間の雑記

【本好きのタイマン】第2ラウンド/『悪意』増田忠則

書評ブログ「本好きの秘密基地」

 

はむちゃんとの読書会

 

【本好きのタイマン】

 

第2回 課題図書は、『悪意』

 

さて、始めます。

 

本作は、

第35回小説推理新人賞受賞作を含む短編集。

4編からなる。

 

マグノリア通り、曇り」

飛び降りをしようとする人物に放った一言で、

また別の自殺志願者の恨みを買い、

自身の娘を誘拐され破滅する斉木という人物の話。

 

「夜にめざめて」

ちょっとしたミスで、

女性の下着を自身の洗濯物に混じらせた高橋勇斗。

彼の、自警団からの執拗な追及に加えて、

実弟の暗部がサラッと明かされて終わる。

 

「復讐の花は枯れない」

いじめで命を絶った少年遺族の怨みが、

加害者を惨事に追いやる。

主人公の速水が、あろうことか、

いじめの主犯格だった西田の娘によって制裁を下されるという皮肉なラストは、ダーク。

 

「階段室の女王」

性悪な女性が、変な男性と登ったり降ったりするお話。

以上。

 

★総括

やはり、

受賞作の「マグノリア通り、曇り」

こちらが、出色の出来。

 

群集心理を巧みに扱っていた感じがある。

 

個としては高い知性と判断力を持ち、

自らの意志によって行動できる人物が、

ひとたび集団に組み込まれると理性を失って感情的な行動に流される。

 

フランスの社会心理学

ギュスターヴ・ル・ボン氏

氏が説いた集団内の個人の特徴が、

斉木の、飛び降り現場での罵声につながる。

 

またまた、

駆け足の舌足らずなレビューで悲しいが、

結構、読後感が暗い。

そんでもって、キチンとオモロ。

 

作者の、今後に期待しながら、

おしまいです。

 

では、また。