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日常を怯えて過ごす人間の雑記

【本好きのタイマン】第4ラウンド/『鬼の跫音』道尾秀介

書評ブログ「本好きの秘密基地」

 

はむちゃんとの読書会

 

【本好きのタイマン】

 

第4回 課題図書 『鬼の跫音』

 

さて、始めたい。

 

まず、本書は短編集であり、6編から成る。

また、各話に必ずSという人物が登場する。

 

1話目

『鈴虫』

Sの死体が見つかり、

俺は、事情聴取を受ける。

俺は、Sを殺して埋めた、

筈であった。

 

S、俺、杏子という女性。

この3人の関係が肝。

交尾で弱った雄を雌が殺す。

そんな虫の様に3人の情愛から思わぬ事実が浮かび上がる。

 

2話目

『犭(ケモノ)』

僕は、家庭で萎縮しながら生きている。

そんな中で、

刑務所作業製品の椅子を見つけて、

その脚に刻まれた或る文字を見つける。

そこには、

Sという人物の忌まわしい惨劇の秘密が。

インセストや、殺人。

最後に、僕がとった行動とは。

 

3話目

『よいぎつね』

20年前のW稲荷神社。

10代の男子の中で、私はSから女性を犯すように言われる。

度胸試しとのことだ。

果たして私は、

祭りの夜の神輿蔵で少女を犯してしまう。

それから半年後に大学に進学し出版社に入り、

20年。

私は、自身の原罪、狂気と対面することになる。

 

4話目

『箱詰めの文字』

作家の僕の私室に、

泥棒に入ったという青年が訪ねて来る。

高校時代の同級生Sの弟であった。

Sの作品を盗作してデビューした私。

それを、糾弾する青年。

だが、そこにはシリアルキラー私の秘密が絡まっていて。

 

5話目

『冬の鬼』

私は火事で全てを失った。

母と浅からぬ関係にあった医師のタバコの不始末によるようだ。

そして、私の顔は焼け爛れて求婚者も去っていった。

しかし、Sだけは違う。

私を愛していた。

私はSに顔を見られたくない。

そこで件の医師に或る手術を依頼する。

 

5話目

『悪意の顔』

クラスメイトのSは、母親が他界し孤立して次第に狂気じみて来る。

僕はそれに脅威を感じた。

そんな僕が出会ったのは、

カンヴァスに人間を封じ込められるという風変わりな女性だったのだが。

 

〈総括〉

道尾秀介作品は最近の『N』を含めて2冊しか読んでいない。

しかし、この短篇集、

言い得て妙なのである。

妖気すら感じる作品。

全話にSなる人物が出るが繋がりはなく、

主人公には固有名詞の名が無い。

 

この読後の不穏な感触はなんだろう?

 

因みに、カラスが作中にスパイスとしてチラッと描かれている辺りも個人的に好きだ。

 

自分で、はむちゃんに提示して読んだにも関わらず満足なレビューが書けない。

しかし、

オモロかったなぁ!

 

では、また。