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日常を怯えて過ごす人間の雑記

『痴漢とはなにか』牧野雅子

性犯罪が跳梁跋扈する中、

痴漢

この犯罪に対して、

希薄な警戒心しか抱かなくなっていた。

自分は関係無い。

そんな古い事は、どうでもいい、

とまではいかないが、

気が抜けていたところに、本書を読んだ。

発行は2019年。

そう古くは無い。

 

著者は、自身も被害経験があり、

ことの深刻さを訴える。

 

様々な著名人の名前と、

その人物による配慮に欠ける言動が書かれており、背筋が凍る。

果たして自分は、どうであったかと。

 

例えば、女性が気晴らしや、金銭目的で男性を罠に嵌める冤罪。

これに関して、

駅員について行ったら終わり。

ダッシュで逃げるべし。

 

こうした、浅い知識からの対応ばかりを、

盲目的にイメージしていた自身を恥じる。

 

実際には、駅員について行くと終わりなどという事はなく、即逮捕というケースが全てということは幻だという。

 

また、女性の価値が高いとか低いとか、

まるで値踏み基準の如く語られてきた、

痴漢の問題。

 

確かに、

女性専用車両に乗る女性の、気まずさ。

痴漢被害を訴えることの恥ずかしさ。

これらに対し、

僕も、すっかり見誤った部分がある。

 

意識している方が、ブスと罵倒されたり、

勇気を出して打ち明けた方が、

誘っていたと揶揄される。

そんな、アンフェアな社会がある。

歴史がある。

 

僕は、別に聖人君子では無いし、

上野千鶴子氏の肖像画を、

拝んでいる訳でも無い。

 

しかしながら、

男女の間に、不条理な問題があるのは、

何だかモヤモヤするし、

ゾッとする。

 

この感情を大切にしたい。

何故ならば、

僕が、明日、否、

今夜にも、他者の尊厳を踏み躙る可能性が、

全くのゼロとは言えず、

さらに、この文を書いただけで、

万全だと勘違いしないとも、

断言出来ないからである。

 

作家、映画監督、芸人など、

本書で指摘を受けている方は、

錚々たる顔ぶれだった。

 

という具合に、問題を肩書やパワーバランスで考える僕は、

まだまだ、お粗末な人間なのだろう。

 

寛容な社会とは、

なんなのだろうか?

 

僕には、まだ答えは見つからない。

 

では、また。