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日常を怯えて過ごす人間の雑記

真の罰とは?『死刑のある国で生きる』宮下洋一

欧州在住の著者は、

米国、フランス、スペイン、日本。

これらの国での死刑事情の取材を論拠に、

死刑制度を追求。

 

いくつかの印象的な言葉があった。

 

クロージャー」米国

終結を意味し、犯人が処刑されることで、

被害者遺族の中に区切りがつき、

前進できる感覚を表す。

 

アクワイアードサイコパス

前頭葉が脳腫瘍または、

血管障害や外傷などで損傷を受けた人物。

倫理観の低下が見られる。

 

「プリシオナリサシオン」スペイン語

所謂、刑務所ボケ。

刑務所生活に適応し、

そこにおちついてしまう。

 

「現場射殺」

治安低下、銃問題の深刻化するフランスにおける問題。

 

こうした、世界の事情。

 

著者は、死刑が野蛮な行為ではないと思ったことは一度も無く、

むしろ逆であるとした上でいう。

 

日本人は、欧米人のそれとは異なる正義や道徳の中で暮らしている。

西側先進国の流れに合わせて死刑を廃止することは、たとえ政治的に可能でも、

日本人の正義を根底から揺るがす恐れがある。

 

著者の結論として、

人命の大切さに重きを置くならば、

重大犯罪に手を染めた者たちが、

「より良く生きる」ためにも、

極刑に向かい合うことで、死刑囚は生の尊さを知る。

 

そして、死刑の是非は読者次第。

つまり、本書の捉え方は、各々に委ねられた。

 

とは言え、本書にもあるように、

一党支配の長期政権下の日本。

まだまだ、変革は難しい。

 

最後に、

在職中の法務大臣人間性や死生観、

刑罰に対する感覚に、

すべて託されるという実情がある。

 

さて、ざっと読み返しながら、

僕は、再び死刑の存置か廃止か。

このテーマに頭を悩ませている。

 

平野啓一郎による、

『死刑について』

こちらでは、死刑の廃止の方向に論点が進む。

僕も概ね納得した、つもりにはなっていた。

ただ、他の関連書に目を通していくたびに、

迷宮に入ってしまう。

 

死刑のための殺人。

死刑に苦しむ人間。

 

これらの対立する感情に、

僕は何がどうなのか分からないが、

宮下洋一氏の今回の1冊は、

死刑を論ずる上で、重要であると感じた。

 

先進国、民主主義、

こういった国がそうだから、

我が国も足並みを揃えようという、

簡単な問題では無く、

ケースバイケースとまで言って良いかは分からないが、社会の気質の様なものを抜きにしては、死刑制度の是非は語れない。

 

こういった私見を持つに至った。

僕は。

 

では、また。