郵便局のおじさんは9時40分ごろやってくる

日常を怯えて過ごす人間の雑記

浮浪者とアルトサックスと

20代の頃に通っていたBAR。

そのマスターに、

僕はサックスを教わった。

 

当時、その店に入り浸り、

朝方までジャズを聴きながら、

カクテルを飲んだりマスターと談話して、

なまら楽しかった。

 

秘密のカクテルなんかも教えて頂き、

サックスの演奏も指導してもらった。

 

マスターは、白髪にパーマがかかった髪に、

シャツにベストを身につけて、

サックスからピアノまで、

講師もなさっていて、

囲碁にもハマっていた記憶がある。

 

僕はその壮年のマスターに憧憬を抱いていた。

 

それから、

10年後くらい、

マスターは、店を閉めて居なくなった。

風の噂で、

逆DVで、参ってしまったらしく、

そのもの悲しさが、

ずっとココロにこびりついていた。

 

そして、つい先日のこと。

ファッションビルのフロアで、

袋を持って徘徊する浮浪者を目撃。

 

まさに、あのマスターのNさん。

なんだか、悲しさや月日の残酷さが襲ってきて僕はその場を去ってしまった。

 

本日、古いサックスの査定が完了。

6万円だった。

 

このお金をマスターに渡したい。

そんな衝動に駆られた。

 

人生とは奇なるモノだ。

 

では、また。