郵便局のおじさんは9時40分ごろやってくる

日常を怯えて過ごす人間の雑記

彼はエロティカ・セブン

人には、風景や場所に記憶を纏わす。

そんな、力の様なものがあると思う。

料理に添えられた香草。

振りかけられたスパイス。

 

僕のイメージが、無間の虚空を駆ける。

 

そう、今宵の追想

ある、男性の背中。

 

橋が頭に浮かぶ。

僕の住む街の古い橋。

 

いつかの冬に、生命を断とうとした人。

 

幾度も隔離病棟に入り、

薬を酒で流し込む。

或いは、彼の中の闇を、

そして、彼の中の病み。

それらを、飲み込んだ瞬間の、

ゴクリ

その音の、あまりに危ういリアリティ。

 

彼は今、どうしているやら。

何処かに閉鎖されているかもしれない。

 

あの橋を、渡っていく彼は、

ダッフルコートに、ニット帽。

 

ソープランド

 

そんな響きが吐息から溢れ出した。

アイスダストを撹拌するかの様に。

 

彼は、

今でも、哀しげなエロティカ・セブン

 

では、また。