人には、風景や場所に記憶を纏わす。
そんな、力の様なものがあると思う。
料理に添えられた香草。
振りかけられたスパイス。
僕のイメージが、無間の虚空を駆ける。
そう、今宵の追想。
ある、男性の背中。
橋が頭に浮かぶ。
僕の住む街の古い橋。
いつかの冬に、生命を断とうとした人。
幾度も隔離病棟に入り、
薬を酒で流し込む。
或いは、彼の中の闇を、
そして、彼の中の病み。
それらを、飲み込んだ瞬間の、
ゴクリ
その音の、あまりに危ういリアリティ。
彼は今、どうしているやら。
何処かに閉鎖されているかもしれない。
あの橋を、渡っていく彼は、
ダッフルコートに、ニット帽。
そんな響きが吐息から溢れ出した。
アイスダストを撹拌するかの様に。
彼は、
今でも、哀しげなエロティカ・セブン。
では、また。