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日常を怯えて過ごす人間の雑記

戦争と香月泰男の世界

2023/08/15

終戦の日

『私のシベリヤ』を開く。

洋画家の香月泰男の記録。

 

香月泰男氏は、シベリア抑留体験者で、

初版の『私のシベリヤ』

こちらは、立花隆氏がゴーストライターとして執筆した。

 

その中に、

「1945」という香月氏の作品がある。

遺体の絵だ。

この絵に香月泰男が込めた想いがある。

 

赤い屍体と黒い屍体

この2つである。

 

前者は、満州の方々に私刑に遭い皮を剥かれた日本人の、屍体。

 

後者は、原爆により焦土と化した地の日本人の屍体。

 

月氏曰く、

我々は、先の戦争を語る際、

この黒い屍体の話にばかり走りがちである。

被害者としての戦争。

しかし、同時に中国人、満州人の方々の恨みを買う様な、加害者としての戦争がある。

 

僕は、『シベリア鎮魂歌』という、

立花隆氏のドキュメントを観た時、

子供心に「屍体」という表現に冷たい絶望を感じた。

また、立花氏の香月泰男という画家への並々ならぬ想いも受けた。

 

この赤い屍体に、立ち返らない限り、

戦争というものの実態には迫れない。

そんなメッセージ。

 

この思想に納得出来ない方も少なからずいらっしゃると思う。

ただ、ひとつ言えるとすれば、

戦争という愚行により虐げられた無辜の民。

脅威のムーブメントにより散った魂。

その方々の屍の上に自分がおり、

生かされている。

そして、

次の世代の足場になるのは、

自分達の歩み方、生き様に依るという点。

 

戦後という言葉を、風化させず、

この先に再び惨事が起こらぬ様に、

祈り、行動していきたい。

 

戦没者慰霊を胸に抱きながら。

 

では、また。