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日常を怯えて過ごす人間の雑記

まさに狂気『狂伝 佐藤泰志』中澤雄大

芥川賞候補に5度ノミネートされるも、

受賞には至らず、

1990年、41歳の若さで自裁

近年、著書の映画化が連発されている作家。

佐藤泰志、その人である。

 

お酒や、競馬や、精神薬、

女性関係や、文壇関係のトラブル。

修羅の人生を生きた彼は、

大江健三郎村上春樹などに匹敵する評価を受けたりもしている。

 

タイミングや、人の縁、

社会の風向きが、少し違えば、

佐藤泰志の作家としての成果は、

もっともっと素早く且つ顕著であったであろうと思わされる。

 

そして、本書の執筆に11年をかけた、

中澤雄大氏の執念、

そして情熱には形容し難い重みがある。

ここまでの佐藤泰志研究は、

凡庸な者には不可能だと思うし、

著作への愛も深い。

 

僕はこの本を買って、

しばらく読めずにいたが、

それは、この600頁に込められた、

途轍もない熱量に気圧されていたからかもしれない。

 

本書を読み、

少し暗澹とした心持ちにもなった。

 

しかし、その感情から得たものも確実に有る。

 

さらに、いわた書店の店主、

岩田徹さんとの交流もあったという件もあり、

親近感も勝手にわいた。

 

僕の記事は拙い紹介の域を出ないが、

重厚なノンフィクションとして、

何度も読み直すであろう一冊だ。

 

では、また。