過去を知っていると信ずるのは愚の骨頂だ。
われわれが過去を捏造するのだ。
過去に向かって立つ時、
われわれの眼前にあるのは、
無数のまことしやかな、
虚妄の道路である。
過去について、われわれは頭の中で小説を書く。
〈こぼれ話〉
真理だとか死について悩んだ10代。
様々な夭折者の本を読んだが、
原口統三の意識には慄然とした。
「過去」という現実を悪戯に歪め、
或いは修正せんとする現代を撃つ。
他にも広がる原口統三の世界。
無数の散文に秘められた、
ただならぬ、イメージの煌めきと共に。