昔、毎日父に会いやって来る客人がいた。
よく覚えていないが、
近所の独居老人だったと思う。
そのお爺さんは、
いつも、父の車があるかどうか確認して、
インターホンを鳴らしてきた。
庭の草花の手入れや、
季節の移ろいについて語っていたらしく、
目にする頻度も増えていった。
ところが、
ある時から父は、
お爺さんを避けるようになり、
次第に疎遠になった。
そんな記憶がふと蘇った際に、
父に理由を訊いてみた。
あの時のお爺さんとの関係性について。
答えは、死別が近いので悲しくなるから。
というものだった。
仲良くなればなるほど、
高齢のお爺さんとの別れは辛くなる。
だから、その前に距離を置いた。
僕には無い考え方だった。
残りの日々を濃密に過ごしたいという感覚ではなくて、別れを予めシャットダウン。
良いか悪いかは、別として、
人付き合いには、
千差万別あるなと、思った。
そんなことを、
ふと、思い出した。
では、また。