1908年、日本の南西の端、
水俣市。
そこに、日本窒素肥料が操業開始。
後の、
チッソである。
チッソは、工業排水を垂れ流し続け、
1956年、
水俣病が発生した。
1970年、
有機水銀の流出などの責任を認めない、
チッソに抗議するため、
患者たちは、
白装束を身につけ「怨」の文字を掲げて、
チッソ本社前に座り込んだ。
僕は、この光景を見た時に、
異様に感じた。
しかし、異様なのは彼らではなく、
公害を引き起こし、
人々を病魔におかした側の者たちだ。
その、患者達の苦しみやヒューマニティを活写したのが、
『苦海浄土』である。
僕は、
神々の村
天の魚
以上3部作を1冊に纏めた完全版を、
読んだが、
それなりのボリュームはある。
しかし、
そこには、
近・現代社会が手放した十全たるメンタリティの在処が、
著者の並々ならぬ筆致で描かれている。
パンデミック下の現在、
この1冊は、
一層ズシリと、重い。
では、また。