以前、ホットドッグ・プレスに於ける
北方謙三の悩み相談コーナーがあった。
僕は単行本で読んだのだが、
タイトルは、『試みの地平線』
時代も時代で、フェミニストには鼻につくであろう大胆な切り口だ。
そんな中で、
親が他界し、更にはいじめられて、
生きているのが嫌になったという相談者への答えが印象に残っている。
北方氏は言う。
「とりあえず本を50冊読め!
俺は小説が役に立つとは思わないが、
死にたがっている人間を止めるくらいの時間を与えることはできると思う」
僕が感極まったのは、その後の1文。
「それでも死にたいと思ったら、また手紙をくれ、もう一度話そうじゃないか」
と優しく提示するハードボイルド作家の姿勢。
心が折れそうなとき、それに突き刺さる強烈なひと言も確かに重要かもしれない。
しかし、常にそれがベストとは限らないし、
突き放される感触もある。
その点で、50冊の読書後になお死にたいのならば、また話そうという言葉が重要なセーフティーネット。さらにいえば、
名言じみたワンフレーズで即解決、
はいバッサリ!流へのアンチテーゼであり、
相手を見捨てない優しさと、
言葉への責任感を感じた。
真剣な人間の言葉は重い。
悩めるキミへ。
真剣になってくれる相手を、
真剣に探してみませんか?
では、また。